コラム
まずは「自分を満たす」こと。それが利用者さん・患者さんの満足へつながる。
「このクッキー、すごく美味しいからあげる!最後のひとつだけど、、、」
こう言われたらどう思いますか?
医療・介護・福祉に携わる仕事をしている方は、知らず知らずのうちに自分の大事な最後のひとつのクッキーをあげているかもしれません。
今回の勉強会テーマは「ケアマネージャーのモチベーション」
2020年2月18日に、地域のケアマネさん達を集めて、第二回在宅医療実践講座を開催しました。
勉強会には23名の方にご参加いただきました。ありがとうござました。
今回のテーマは「ケアマネージャーのためのモチベーションの保ち方」。
岡崎市でケアマネジャーとして、居宅介護支援事業所の社長として、そしてケアマネージャーを紡ぐ会愛知支部の副支部長として活躍されている前田麗子さんを講師としてお招きしました。
冒頭の質問は、今回の勉強会の中で、講師の前田さんから問いかけられたものです。
自己犠牲の精神は尊いけど、、、、
医療職や介護職の方は、患者さんや利用者さんへ寄り添いなさいと教育されてきました。たとえ自分がいっぱいいっぱいでも、「人のために」「自己犠牲」の精神で支援・援助をする。それが医療職・介護職であると教えられます。
冒頭のクッキーの質問を思い出してみてください。自分が「最後の一つのクッキーあげる」と言われたら、どう反応しますか?
おそらく、多くの方が、「いや、結構です。ご自分で食べてください」と言うのではないかと思います。
一方で、「このクッキー、すごく美味しいからあげる!うちにまだいっぱいあるから!」と言われたらどうでしょうか?
この場合であれば、抵抗感なく受け取る方が増えると思います。
このクッキーの話って、実は医療介護の仕事に当てはまるのではないか、というのが前田さんの問題提起なんです。
自分を犠牲にして、患者さん・利用者さんのために仕事をする。この自己犠牲の精神は尊いものでしすし、否定されるものではありません。
しかし、自己犠牲の上に成り立つサービスが、本当に患者さんや利用者さんの満足につながるのでしょうか。
いや、そうじゃない、まずは「自分を満たすこと」が大切なんだということを勉強会では教えてもらいました。
内発的動機付けと外発的動機付け
勉強会では、まずは自分を満たすことが大事であるという前提のもとに、さまざまなワークを通じて、自分のモチベーションの源泉になるものを探りました。
モチベーションは日本語では「動機付け」といいますが、その源となるものとして、「内発的動機付け」と「外発的動機付け」という概念があります。
内発的動機付けとは、簡単に言うと、「自分の内面」から湧き出るものに動機付けられることです。
一方、外発的動機付けとは、「自分の外側」からの刺激(報酬や賞罰など)によって動機付けられることです。
「内発的動機付け」と「外発的動機付け」のうち、特に医療介護職は、内発的動機付けが重要です。外発動機付けだけにモチベートされている状態だと、いつかは疲弊してしまいます。
癒され、満たされることの重要性
自分の内側にあって、自分を満たしてくれる感情・思いはどこにあるのだろうか。それを探るために内観ワークをしました。具体的には、心に残る一人の患者さんや利用者さんを思い浮かべて、2人1組で対話をするワークです。
語り手は、ただただ話すことに集中し、聞き手はただただ聞きます。この時の「聞く」とは、相槌打つ、同意するなどすることで、話し手に対して、「あなたの話を聞いているよ、受け入れているよ」と表現することです。そうすることで、語り手が話を聞いてもらえるという感覚を感じ、それが癒しにつながります。
この内観ワークを通じて、心が癒され、自分の大事な価値観や思いを改めて感じることでモチベーションにつながるのです。
自分が満たされることが、患者さん・利用者さんの満足につながる
医療介護などの対人援助職の方は「感情労働」の従事者と言われているそうです。
感情労働とは、感情が仕事をする上での不可欠な要素で、体や頭だけでなく感情の抑制、緊張、忍耐などが必要な労働のことです。
相手の状況をみながら、自分の感情をコントロールすることが求められ、自分の感情を知らず知らずのうちに酷使してしまっています。
医療介護職の方こそ、まずは自分を満たことが重要です。自己犠牲の呪縛から解き放たれ、まずは自分がイキイキと生活することが重要なのだと勉強会を通じて学びました。
そして、実は、「自分の満足度と利用者の満足度は相関する」という調査結果もあるそうです。自分を満たすことが結果的には患者さん・利用者さんの満足につながるということですね。