コラム
作業療法士(OT)の重視する「役割」とは
作業療法士(OT)は、対象者が「その人らしい作業」ができるようにサポートし、アイデンティティ再獲得のお手伝いをする職業になります。
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そこで今回は、アイデンティティの基礎であり、作業療法士が重視する「役割」について実際に当院の作業療法士に聞いてみました!
学生編集部:こんにちは、裕二さん!OTがどんなことをするのかは理解できましたが、OTが重視している「役割」って何ですか?
OT裕二さん:よくぞ聞いてくれました!順番に説明していきますね。
OTの重視する役割って?
アイデンティティに最も近い要素とされる「役割」は10種類に分類されます。
役割
①学生、②勤労者、③ボランティア、④養育者、⑤家庭維持者(例:主婦)、⑥友人、⑦家族の一員、⑧宗教信仰者、⑨趣味人/愛好者、⑩組織への参加者
どんな人であっても、1つの役割しか持っていないというわけではありません。社会や組織、周りにいる人たちにとってあなたがどのような存在や立場であるかによって、柔軟に変化します。
学生編集部:確かに私も色々な役割を持っています!今はブログを書いているので、勤労者になりますね(笑)
OT裕二さん:そうですね(笑)これ以外にも役割があるのでさらに紹介していきますね。
また、病気や高齢の影響を受ける人にとって大切な役割も存在します。
- 功労者役割:過去の仕事の実績や、親しい仲間との思い出、自分が育てた家族の成長などは、高齢者にとってはかけがえのない資源になり、それによって自分の価値を語ることができる。
- 自己管理者役割:医学的管理や社会との繋がりの維持も含め、「自分のことを自分でやる」という役割。10の役割とは異なり、社会的な認識や地位を与えられていないため、自分でやる気を維持する必要がある。
これらの役割は、病気や高齢により今までの役割が減っていく中で、新たに促していきたい部分となります。
一方で、病気を患って入院や在宅療養をされている方は、以下のような望ましくない役割に陥りやすいです。
- 病者役割:入院などで、いつもの社会的な期待が中断されるかわりに、医療者の助言に従うことを期待されるようになる。
- 障がい者役割:障害を持っているだけで、まわりからの期待が小さくなり、過剰な援助を受けることを強要されたり、何かに参加する可能性を否定されたりする
学生編集部:こんな役割もあるんですね…!患者さんが望ましくない役割になってしまうとどうなるんですか?
OT裕二さん:アイデンティティの基礎となる役割がそのような状態になると、患者さんの本当の「その人らしさ」を見出すのが難しくなってしまうんです。そこで、私たちOTは望ましくない役割に患者さんが陥らないような心理的ケアを行うように心がけているんですよ。
学生編集部:そうだったんですね。すごく大事だと思います!また、役割には2つの側面があると聞きました。具体的に教えてください!
OT裕二さん:OKです。紹介していきますね。
役割の2つの側面
役割には更に2つの側面が存在します。
- 認識的側面:社会や集団の中で、「自分は何者か」という位置づけ
- 作業的側面:役割を果たすために必要な課題
職業が教師の人で考えてみましょう。この人は「私は教師である」と認識しています。これは認識的側面となります。
一方、教師であるために「生徒に勉強を教えよう」「宿題の丸付けをしよう」と思い、行動していきます。これは作業的側面となります。
OT裕二さん:実際に私たちOTが患者さんの役割について介入するのは作業的側面が中心になりますよ。
学生編集部:そうなんですね。OTの方は患者さんと実際にお話ししていく中で、患者さんが望む役割を果たすための課題を行うサポートをする必要があるということですね。
まとめ
患者さんの望む役割は、今までの役割を作り出してきた、興味や関心、自己効力感、価値観や欲求段階、生活習慣、作業のバランス、歩んできた人生などを見ていくことで浮かび上がっていきます。
患者さんはどのような役割を望んでいるのか、望んでいる役割を取り戻すためにはどのような支援ができるのかを考えていくことが大切になりますね。