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現場で使える知識

寝たきりの原因になりやすい転倒の原因から予防まで

寝たきりの原因になりやすい転倒の原因から予防まで

在宅医療を利用されている患者さんの多くは高齢者です。高齢者の方は、ちょっとした転倒でも、それが原因で骨折になることがあります。厚生労働省の統計によると、65歳以上の要介護者の中で介護が必要となった原因の中でも骨折・転倒は12.5%にもなるそうです。
そこで今回は、寝たきりの原因になりやすい転倒についてご紹介します。

 

転倒の原因

転倒の原因は、外的要因と内的要因があります。

◯外的要因

  • ちょっとした段差がある場所
  • 滑りやすい場所(フローリングなど)
  • 手すりがない場所(玄関、脱衣所など)
  • 履物の種類(スリッパやかかとのないものは特に滑りやすい)

◯内的要因

  • 足腰や姿勢を支える筋力の低下
  • バランス能力の低下
  • 白内障や緑内障などの眼の病気による視力の低下
  • 一部の認知症やパーキンソン病
  • 内服薬の副作用


このように、転倒の原因は多岐に渡ります。
では、転倒を防ぐためには具体的に私たちはどのような対策ができるのでしょうか?

 

私たちにできる転倒の対策

1)生活環境を整える

外的要因は介護用品を新たに利用したり、介護リフォームを行うことで対処できる場合が多いです。
例えば、段差があるところにスロープを設置したり、起き上がりや立ち座りがある場所に手すりを取り付ける等の対策が可能です。患者さんが要介護認定をお持ちであれば、介護リフォームの補助金を受けることもできます。
また、介護リフォームを行わなくても、室内履き・生活動線・電気コードなどの配線の見直し、カーペットの端がめくれないように留めることなどはご家庭ですぐ実践できます。
まずは患者さんの要望をしっかり聴き、介護される側の視点を取り入れながら環境を整えていくことが大事ですね。

2)歩行機能を維持・改善する運動・リハビリを行う

加齢や病気に伴い、筋力やバランス能力は低下してしまいます。普段の暮らしで行えるものとして、お馴染みのラジオ体操があります。
これは、全身のストレッチ・バランス練習・筋力トレーニングの要素が盛り込まれた理想的な運動といえます。放送に合わせて行えば、定期的な運動習慣にもつながります。
ラジオ体操がちょっと大変な方は、安全な場所でのつま先立ちや片足立ち、椅子からあえてゆっくりと立ち上がる練習でも、転倒予防のための筋力トレーニングになります。

患者さん1人1人のレベルに合わせた機能訓練のメニューを設定し、出来る限り普段から運動やリハビリを積極的に行うように促しましょう。

3)筋肉の材料となるタンパク質を摂取する

加齢に伴い、筋肉を合成する力は弱まり、骨格筋量は減少します。また、タンパク質が不足するとフレイルティの状態に陥りやすくなります。

高齢者が発症しやすい「フレイル」って?


筋量の減少を防ぎ、運動やリハビリの効果を更に上げるために、積極的に良質なタンパク質を含む食材を取り入れましょう。具体的には、牛乳、まぐろ赤身、牛肉、鶏胸肉などが挙げられます。
また、タンパク質のもとであるアミノ酸に着目した、ゼリータイプのサプリメント等も市販されています。このように、食事以外でも手軽にタンパク質を摂取する方法もあります。
厚生労働省が作成した「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、高齢者(65歳以上)の方は1日に60g以上のタンパク質を摂取できるのが望ましいとされています。毎回の食事で一定量のタンパク質を摂取することで、効果的に食事でタンパク質を摂取しましょう。

注意

慢性腎臓病においては、タンパク質摂取が腎機能の低下を促進させる可能性があります。腎臓に疾患がある方は医師に相談してください

 

4)服薬中は体調の変化に気を付ける

転倒に繋がる危険性の高い薬は血圧降下剤(めまい・ふらつき)、睡眠薬(ふらつき)、抗ヒスタミン剤(眠気)、抗精神病薬(脱力感)等が挙げられます。

このような薬を患者さんが服用する際には、あらかじめ使用上の注意を確認し、服薬履歴を記入するようにしましょう。
もし、服薬の開始後に転倒などの事故につながる恐れのある副作用が確認された場合は、薬剤師や医師に相談してください。

 

まとめ

どんなに対策を施しても、転倒する可能性はあります。もし転倒事故が起きた場合は、症状の軽重に関わらず、速やかに医療機関に相談してください。

 

この記事を書いた人

学生編集部

木の香往診クリニック 学生編集部

医療系の学部に通う大学生です。学生目線で在宅医療について発信していきます。

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