現場で使える知識
ケアマネさんでもできる気管切開への関わりについて
気管切開は重度の呼吸障害がある患者さんに施されます。気管切開部にカニューレと呼ばれる管を挿入することで、呼吸障害がある利用者さんでも在宅生活を可能にしています。
一方で、非常に慎重な管理も求められます。気管切開で最も気をつけないといけないことが挿入中のカニューレが抜管してしまうことです。
抜管してしまうと呼吸困難により命の危険性がありますので速やかな対応を求められます。
そこで今回は、ケアマネさんが気管切開中の利用者さんを担当することになった場合の対応について紹介していきます。
カニューレが抜けてしまったら
気管切開をすると気道はカニューレで穴を通した状態となっています。しかし、抜管してしまった場合、気道の穴を塞ごうと気道の組織が修復作業にかかります。そのため、抜管してしまった場合には、再挿入を早期に行う必要があります。
病院では抜管した場合、気道が塞がらないように医師が再挿入を行います。在宅医療の場合は、第一発見者が家族になることも多いです。
気管切開を挿入されている患者さんを受け入れた際には、緊急時どのように対応していくのか事前に確認をしておくことが重要です。
ケアマネジャーさんは、抜管した場合の対応について、在宅主治医や訪問看護師など患者さんに関わるメンバーと役割分担し、事前の確認を心がけましょう。
カニューレの扱いについて
カニューレはバンドで首に固定していますが、カフと呼ばれる風船もくっついています。これを注射器によって空気入れることで、カニューレ先端が膨らみます。先端が膨らむことで固定を安定させます。
カフは徐々に空気が抜けるようになっており、耳たぶ程度の厚さでカフを維持させます。最近では、カフ圧計を用いて、家族に一日3回程度カフ圧の確認を指導することが増えてきています。
カフ圧の確認や不足時のエアーの注入など、細かな指導を行うことで、家族主体の介護にも繋がります。時間をかけて家族を指導していくことで、ご家族が自信をもち介護に参加できるようになります。
療養生活を継続させていくために、ご家族が主体的に介護に参加していく環境を作っていくことが大切です。
体調の確認について
気管切開をするとカニューレの刺激により痰が増加しやすく、誤嚥による肺炎を起こしやすいです。ケアマネジャーさんに気にかけておいて欲しいのは以下の点です。
■血中酸素飽和度
体内の酸素量を示す値でSPO2とも呼ばれます。利用者さん宅に血中酸素飽和度簡易測定器(パルスオキシメータ)がある場合は、訪問時に測るようにしましょう。
気管切開をしていると血中酸素飽和度は低下しやすいので、測定器がなければ用意の必要がないか、ご家族から訪問看護師さんへ確認してもらうようにしてください。
血中酸素飽和度の基準値は、利用者さんが酸素吸入をしているなどの状況により異なります。普段の値を確認しておきましょう。
■発熱がないか
発熱の有無が感染症や肺炎の早期発見に繋がりやすいので、体温には常に気を配っておいてください。成人の発熱の定義は37.5℃以上ですが、血中酸素飽和度と同様に個人差があるので、こちらも普段の値を把握しておきましょう。
■痰の量や性状に変化はないか
痰は気管切開中の利用者さんの重要なポイントです。発熱があると痰の増加・水分不足は、痰の粘り気の増加・感染症にかかると緑色や黄色に変化というように、自分で訴えることができない利用者さんの体調の変化を知らせてくれます。
ケアマネジャーさんも訪問時には吸引機内に貯留している痰が変化がないか確認し、必要に応じて訪問看護師さんに報告できるようにしましょう。
まとめ
ケアマネジャーさんが、気管切開中の利用者さんへ直接医療行為をする場面はあまりありませんが、状態の観察や報告などケアマネジャーさんでもできることはあります。
医療知識が必要となる気管切開ですが、ケアマネジャーさんもチームの一員として利用者さんの在宅での暮しを支えていきましょう。