コラム
ターミナル期の患者さんに対して必要な作業療法の視点とは
今回の勉強会のテーマは「ターミナル期のリハビリをどうケアプランに生かすか」
9月16日に、地域のケアマネさんをお呼びし、木の香おやつ勉強会を開催しました。
「ターミナル期のリハビリをどうケアプランに生かすか」をテーマに、当院の作業療法士の伊藤裕二がお伝えしました。
前月でご好評だったため、内容を改めて行いました。ありがとうございます。
作業療法士についてご存知ですか?
「作業」という言葉を聞くと、皆さんはどのようなイメージを持たれるでしょうか?
作業は英語で「Occupation」と言います。人間の生活・人生を作業の集合体と捉え、積み重ねられた作業歴が、その人のアイデンティティを作ると考えます。
アイデンティティとは、自己同一性ともいい、状況や時期などによって変わることのない「自分は自分である」という自己認識によって確立されるものです。つまり、「その人らしさ」そのものを自分で認識できている状態がアイデンティティということですね。
作業療法士は、対象者が「その人らしい作業」ができるようにサポートし、アイデンティティの再獲得のお手伝いをする職業になります。
理学療法士が運動機能回復のスペシャリストであるならば、作業療法士は患者さんの「その人らしさ」を支えるスペシャリストと言えます。
ターミナル期に必要な作業療法の視点とは?
ターミナル期(終末期)とは病気の治癒の可能性が低く、数週間~半年程度で死を迎えると予想される時期になります。
このターミナル期では、多くの場合疾患の治癒が目的ではなくなるため、患者さん自身の「その人らしさ」を支える視点が重要になってきます。
患者さんに対して医療者が関わるとき、大きく2つの視点があります。それは「サイエンス」と「アート」です。
サイエンスとは、人間に共通する体の仕組みです。どんな人であっても同様の症状を示せば、同じ治療法が適用できるため、ある程度同様の結果が得られるということになります。
一方、アートとは、その人の経験から作られた個性です。例え同じ病気でも、患者さん1人1人で「病気になってもやりたいこと」は異なります。
例えば、末期の大腸がんの患者さんがいるとします。がんが腰へ転移した場合、骨折を予防するため、寝返りや起き上がりの方法を工夫するように指導します。これはサイエンス視点でのアプローチと言えます。
一方、患者さんの生きがいが仕事であった場合、仕事を続けるための環境設定やアイデンティティ獲得のための心理学的な介入を行います。これはアート視点のアプローチです。
このように、ターミナル期の患者さんは同じ症状であっても、「アート」の視点で見るとそれぞれアプローチ方法が異なってきます。患者さんの「その人らしさ」を支えるケアがより重要になるということですね。