コラム
ターミナル期の患者さんの「その人らしさ」を取り戻すためのケアの仕方とは
前回の記事では、「作業療法士とは」「ターミナル期の作業療法の視点」について勉強会の内容をピックアップしてご紹介しました。
今回は、前回の記事でご説明したサイエンスとアートの話を踏まえながら、作業療法の介入について「マズローの欲求の7段階」の視点から紹介していきます。
「マズローの欲求の7段階」の視点から
マズローの欲求の7段階というものをご存知でしょうか?
①生理欲求、②安全欲求、③所属・愛情欲求、④承認欲求、⑤認知欲求、⑥美的欲求、⑦自己実現欲求という段階に分かれ、数字が小さいほど原始的でサイエンスの要素が大きく、数字が大きいほどアートの要素が大きくなります。
ターミナル期において、患者さんのQOLを上げるためには、最終的には⑦の自己実現欲求を上げることが理想とされます。
このような高次欲求を満たしていくためには、まずは①、②のような低次欲求を満たせる環境、特に安心生活環境を設定しなければなりません。
例えば、以下のような取り組みを行うことで安心生活環境を整備できると考えられます。
- 24時間体制の往診といった専門職のフォロー
- 介護ベッドやクッションなどの安楽な物理的環境
- 適切な介護方法の指導
安心生活環境が整うことで、患者さんの更なる欲求、つまり高次欲求を開放することに繋がるのではないでしょうか?
QOL向上のために
「もし、この人生に点数をつけるなら、何点ですか?」このような問いかけから、患者さんの人生を肯定的に振り返ったり、患者さんの大切にしている価値観を実際のリハビリに反映させることもできます。
患者さんが自身の死を意識したとき、世間の価値観から自分の価値観がずれてしまったり、「何か」にすがりたくなるなど、今までの自分とは異なる価値観が浮かび上がってくるかもしれません。
その場合も、患者さんが本当の希望や不安を言いやすいように、柔軟な価値観を持って接することが大切になります。
このように、サイエンスだけではなく、アートの視点を取り入れたアプローチによって、患者さんがアイデンティティの再獲得を目指していくことが患者さんのQOL向上に最終的に貢献していくのではないでしょうか?
患者さんやそのご家族が「その人らしさ」を取り戻せるように、作業療法士とケアマネ、そして幅広い職種が協力して、患者さんの人生を支援していくことが大切ですね。