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イベント報告

体験しながら学ぼう!ACP(人生会議)のいろは 〜もしばなゲームで人生最の最期を考えよう〜

体験しながら学ぼう!ACP(人生会議)のいろは 〜もしばなゲームで人生最の最期を考えよう〜

当法人は、現在、名古屋市北区と名古屋市中川区に2つの拠点を持っています。この度、中川院が新しい場所へ引っ越しをしました。その内覧会も兼ねて、2022年6月16日(木)に地域のケアマネージャー様、訪問看護師様をお招きし、勉強会を行いました。

テーマは「体験しながら学ぼう!ACP(人生会議)のいろは 〜もしばなゲームで人生最の最期を考えよう〜」です。勉強会は大きく2部構成で行いました。

前半は中川院の院長である安江院長によるACPに関する講義。後半は、参加者の方々でもしばなゲームを行い、非常に有意義な時間になりました。

第一部)ACPの問題と代理意思決定支援について

第一部は安江院長による講義です。その内容をレポートさせていただきます。

ACP(人生会議)の定義

まずは、ACPの定義を確認しましょう。ACPとはアドバンス・ケア・プランニングの略です。より馴染みやすい言葉となるように、厚生労働省が「人生会議」という愛称で普及・啓蒙を行っています。定義は以下となります。東京都医師会のサイトから引用です。

アドバンス・ケア・プランニング(ACP)とは、将来の変化に備え、将来の医療及びケアについて、患者さんを主体に、そのご家族や近しい人、医療・ケアチームが、繰り返し話し合いを行い、患者さんの意思決定を支援するプロセスのことです。患者さんの人生観や価値観、希望に沿った、将来の医療及びケアを具体化することを目標にしています。

※出典:東京都医師会. https://www.tokyo.med.or.jp/citizen/acp 

 

ACPとは、繰り返し話し合いを行い、患者さんの意思決定を支援するプロセスのこと。この定義は在宅医療や介護に関わっている方であれば多くの方が既に理解されていることだと思います。

 

ACPの実践状況

では、実際に在宅医療・介護の現場でどれくらいACPが実践されているのでしょうか。厚生労働省が5年に1度、ACPの実践状況を調査しています。その調査を見てみましょう。

ACPの実践状況(人生の最終段階における医療に関する意識調査)

※出典:人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会. “人生の最終段階における医療に関する意識調査”.平成30年3月

調査によると、ACPを実践していると回答したのは、病院23.9%、診療所13.3%、介護老人保健施設38.7%、介護老人保健施設32.4%という結果でした。ACPという考え方は広がりつつあるものの、なかなか実践はできていないというのが現実となっています。

 

ACPを行うタイミングの理想と現実

ACPを行うタイミングについても調査結果があります。

話し合いのタイミング(人生の最終段階における医療に関する意識調査)

※出典:人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会. “人生の最終段階における医療に関する意識調査”.平成30年3月

調査によると、ACPを行うタイミングとして最も回答されているのが「病気の進行にともない、死が近づいている時」です。ACPは将来の変化に備えてなるべく早く本人の意思を確認するのが理想であるものの、実際には死が近づいているタイミングで行われているということが調査結果から読み解けます。

一方で、「命が危機が差し迫った状況になると、約70%の方が、医療やケアなどを自分で決めたり、望みを人に伝えたりすることが、できなくなる」と言われています。この観点から、自分が望む医療やケアを受けるために、自分自身で前もって考え、周囲の方々を話し合い、共有することが重要とされています。

元気なうちから話し合うことが理想ではあるものの、現実としては死が近づいているタイミングでACPが行われているのが現状となっています。

 

ACPの問題点と課題

本人の意思が確認できる状態であれば問題ないのですが、問題になるのはやはり本人の意思が確認できない場合です。

「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」にもある通り、その場合には本人の意志を推定できるご家族等が、代理での意思決定をすることになります。本人の推定意思を尊重し、決定していく必要があります。

元気なときから話し合えればいいのですが、現実的にはそれはなかなか難しい場合も多々あります。

ACPの問題点

  • 元気な時から話し合っておくことは重要。しかしながら、病気がどのように経過で悪くなっていくのか、どのような治療を行うのか、想像するのは困難であり、話し合いが行われるのはまだまだ少ないのが現実。
  • いよいよ死が近づいてくると、それまでの価値観に“ゆらぎ”が生じることもある。
  • がんなどの病気が進行すると、病気そのものや薬剤の影響で本人の意思確認が難しくなることも多く、実際の現場では、家族の代理意思決定を要することが多い。

 

在宅医療・介護の現場では、患者さんご本人を含めた話し合いが行われいない状況下で、ご家族の代理意思決定を求められる場面が多くあります。医療・ケアチームのスタッフは、いかにご家族の代理意思決定支援を行っていくかが、大きな課題の一つになってきます。

 

代理意思決定とジレンマ

実際に代理意思決定をご家族が委ねられた時、家族は解決の難しい困難に直面します。正解がない選択肢がいくつかある中で、ご家族は選択を求められるのです。ここで具体的なケースをもとに考えてみましょう。

90歳台、認知症のある患者さんが肺炎になってしまいました。入院 or 自宅での治療どちらを選びますか?

良い面 良くない面
入院での治療を選択 適切な抗⽣剤治療により、よくなる可能性は⾃宅で治療するよりは⾼いかもしれない。 認知症のため拘束されることで、“ひととしての尊厳“が損なわれる可能性がある。⼊院しても、よくならないかもしれない。
⾃宅での治療を選択 住み慣れた馴染みの環境で過ごせる→拘束されることはなく、“ひととしての尊厳“は保たれる。 使⽤できる抗⽣剤は病院と⽐べ限られ、よくならないかもしれない。≒命を落とす可能性は病院より⾼いかもしれない。

 

ご本人が決められれば一番よいのですが、実際の医療現場では、判断能力が乏しく本人が決められないことはよくあることです。その場合にはご家族が代理意思決定する必要があります。上記の表を見ても分かる通り、どちらを選んでも「良くない面」はあります。

ご家族は、正解のない選択をしなくてはならない”ジレンマ”に陥ってしまうのです。

正解のない選択肢がいくつかある中で、選択を求められたとき、そこには「決められない苦しさ」があります。

 

代理意思決定を支援する上で大切なこと

ご家族の代理意思決定を支援する上で大切だと考えていることをご紹介します。

説明と選択肢の提示

代理意思決定を支援する上で大切にしていることとして、まずは患者さんの全身状態を、医学的に可能な限り正確に分かりやすい言葉で、代理意思決定をするご家族へ説明することです。医学的な知識のないご家族に対しても、正確で分かりやすい言葉を使って伝えます。

そして、予後を考慮した上で、どのような選択肢があるのかを提示します。

決定の支援

決定していただく際には、エビデンスに基づいた医学的なことを説明するのみで、ご家族に一方的に決定をゆだねることはしません。ご家族もどのように決めたらいいのか分からない場合も多く、一方的にゆだねてしまうと、決めたことに対してわだかまりを感じてしまうこともあります。

患者さんの推定意思を尊重し、家族が選択する際の、”苦悩”や”ジレンマ”に寄り添うことが大切です。そして、ご家族が悩みながら決定したことを支持する姿勢も大切です。

 

まとめ

  • 患者さん、ご家族が後悔なく納得のいく意思決定⽀援ができるよう、⼀緒になって考えようとする姿勢、最期まで粘り強く寄り添う姿勢が⼤切である。

  • 意思決定⽀援に際しては、地域のケアチームとの協働が⼤切であり、密な連携を図っていくことが重要である。

 

第二部)もしバナゲーム

もしバナゲームの様子

安江院長の講義の中、ご家族が代理意思決定する際に直面する”ジレンマ”や”苦悩”の話がありました。支援者はその”ジレンマ”や”苦悩”に寄り添っていくことが重要です。

第二部は参加者の皆さまと、もしバナゲームを行いました。もしバナゲームを通じて、意思決定する際の気持ちのゆらぎやジレンマを疑似体験し、支援者としての幅を広げていければという思いから実施しました。

 

もしバナゲームってどんなゲーム?

もしバナゲームは、4人1組で行います。カードを選択しながら、最期の時に自分が大切にしたいものを考えていきます。なぜ自分がこのカードを選択したかの過程を振り返ることで、自分の価値観と向き合います。また、グループ内でそれぞれの考えをシェアすることで、人の多様な価値観に触れることができます。本当に気軽に取り組めるゲームですが、非常に深い示唆を得ることができます。

▼もしバナゲームの詳細はiACPさんのサイトをご確認ください。

参考

もしバナゲームとは

一般社団法人iACP

 

もしバナゲームは盛り上がる!

勉強会では、参加者の方々と当院の医師をはじめとしたスタッフが一緒になってもしバナゲームに取り組みました。もしバナゲームを初めてやる方も多かったのですが、みなさま盛り上がっていました。参加した方からは以下のような感想をいただきました。

カードを選択するたびに自分の考えや思いを考えを改めて確認できた。

年代、性別、性格、お子さんがいるいないなどによっても選ぶカードが違う。人それぞれによって価値観が違うことを改めて実感した。

どうしても自分の価値観に当てはめてしまいがちだが、支援する際に、人それぞれが違うんだとということを意識することが重要だと感じた。

はじめてゲームをやったがおもしろかった!いろいろな価値観、考え方があって、それを話せるのはすごくいいこと。もう一度やったら違うカードを選んでいるかもしれない。利用者さんも月日によって価値観や考え方が変わっていくのだろうなと思った。そんな利用者さんの変化にアンテナをはって感じ取れる自分でありたいと思った。

 

次回の勉強会は2022年8月頃を予定してます!

安江院長の講義、もしバナゲームを通じてACPについて勉強会を行いました。たくさんの方にご参加いただき、ありがとうございました。当院としても非常に勉強になりました。
当院では、このような勉強会を定期的に行っていきます。次回は2022年8月頃を予定しています。

 

この記事を書いた人

木の香往診クリニック

木の香往診クリニック 編集部

在宅医療に関わる介護職や医療職の方へ役立つ情報をお届けします。名古屋市にある木の香往診クリニックが運営しています。

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